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窓​と​椅​子

by asami

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1.
言い訳 04:57
あれほど憧れた夜は いつの間にかありふれたものになっていて きっと特別はもう何もないのだと笑いかける そう、遠くに浮かぶアドバルーンも屋上で回る観覧車も 次の雨が来る頃には 夢にも思い出すことすら無くなるのかもしれない いつからだろうか ふと感じる寂しさを やり過ごすためだけに 毎日を暮らすようになったのは 割れた窓に映るまま いい加減な人だと 笑い飛ばしてくれたなら どれほど嬉しかっただろう 馬酔木に揺れる人影を眺めていた 葦火に揺れる人影を眺めていた 空はそこにあって 変わらず明日はやってくるというのに ぽかりと浮かぶ嘘みたいな月 朝にはもう覚えていないから 離れていった 本当は震える文字に気づいていないふりをして 言い訳だけを今も考えている 俯いている 手を振って 通り過ぎてしまわないで どうか 忘れたくはないな なんて 都合のいいことばかり考えている
2.
指先を眺め 爪先を撫でている 今日という日を 明日へ流すことが出来たら 強く風が吹いている 強く風が 手の届きそうな雲 水面に映る月を掬い上げようとして 睫毛が濡れる 波打ち際に座って どこまでも明るい夜に 首をもたげている 風が頬をなでる 飛沫が上がる 目に染みる潮の音 揺れている 揺れている 揺れている 揺れている 揺れている 瞬く耳鳴り 黒く縁取る灯台の火
3.
肌寒い日に薄目も開けられず ただ蹲っている 手のひらに乗せられるだけの寂しさと 褪せたばかりの言葉を並べ立てて いつまでも眺めている やり過ごすだけの毎日と 乾涸びた造花を撫でて 揺れるカーテンの側を行ったり来たり くだらない事ばかり気にしていたような気がする 今ここにあるのは 草臥れた体と 出涸らした夢 いつかきっとそれなりになれると信じて疑わなかったあの頃 遠くばかりを夢想して 手のひらから全てこぼれ落ちた いつしか無くしてしまったもの 足りないものばかり数えて 今日を蔑ろにしてきた ただ寂しいと言うことも出来ず 夜の波に打たれ続ける 特別だったはずの夜もお酒も歌も ただの塵にしてしまった 屑籠をひっくり返しても とっくに手遅れになっている 無為に過ごした明日を後悔してばかりいる 少し眠ることで そんなこともあったねと 笑い合えたら 夢を見ている間が どれほど嬉しかっただろう 情けない、情けないと 小さく蹲るその背中が どうしようもなく寂しく見えた 酷く冷えたこの部屋の隅に 置いていかれてしまう様な 捨てられてしまった様な 邪魔な日々の 穏やかな日々の 遠い日々の 夕暮れに 踊る人を見ている 踊る人が見ている 微睡む街並みと ぼやけていく後悔は 抱かれながら泥の様に眠ってしまう 夜と逸れたばかりか 白い壁に打ち付けられた空の瓶みたいに 仲直りのための準備を 諦めに行く準備を 勘違いを受け入れる準備を 全てを笑い飛ばす準備を
4.
笑い話 03:11
あの夜が酷く明るく感じられたのは終わりを知らなかったからだ 靴紐も結べないのに駆け出そうとしていたのは明日が終わってしまうことが怖かったからだ よく晴れた夜のうちにまた月の海で会おうよなんて いつかきっとそれなりになれると信じて疑わなかったのはどうしてだろうか 大事にしまっていた宝物、誰にでもあるような昔話を もし、無くしてしまったとしても どうということもなく暮らしてしまうのだろう きっと 歩き続けた先に辿り着けたのはどうしようもなく笑えるほどくだらないもので 教えてもらったばかりの煙が登っていく様を目を細めて眺めた 何度でも同じ話をして目を合わせて諦めてばかりだった きれいなものだけを見ていたかった そんな私を笑うだろうか 話をしてくれるだろうか 手を振って、嘘をついてくれるだろうか もう何も知らないけれど まだ待っているから 明るい夜に置いていくから どこにも残っていない写真の中でだけ私の夜は晴れていて ここにいる私の夜は一度も晴れたことは、
5.
喃語 03:25
一輪の花を花束だって笑って渡すのがあんまりにも可笑しかったから、そう 天井を見上げて思い上がりを隠そうとしていた 足の折れた椅子 濁った硝子 日記の終わりの滲んだインク どれもあの花束には似ても似つかなかった 割れた花瓶に生けたあの時の花が こちらを見て笑っている様な気がした
6.
繰返し 04:32
伸びていく影と 古ぼけた夢を抱きしめていたかった 向かい風に怯えて 臆病だけ隠して いつか見た明るい夜のその底に ただ憧れていた 懐かしいと苦笑うばかりで 凍える帰り道も 軋む椅子も 歌のような笑い声も 全部嘘だったなんて どうして話すことが出来ただろう 忘れることの無い様にと あんなにも大事にしていたはずなのに 今、ここには一枚の写真だって無い 美しく明るい夜の底に消えた 誰にでもある様な昔話を 誰にも分かってもらえないと そっとしまっていた言葉を 精一杯、精一杯飾り立てて 燃やしてしまおう 二度と戻って来られない様に 二度と後悔をしない様に 二度と、 二度と、 二度と、
7.
02:31
波が砂を撫でる 風が戸を叩く 足の折れた椅子 空っぽの椅子 遠く、遠く どこかで鳴る枯れた音 どこかで聴いた懐かしい音 思い出すのは枯れた花束と 活けた造花 裸足で駆け出したのは 置いていかないでと 笑うために ついてきた足跡 置いてきた鼻歌 穴の空いてしまった壁 瞬く照明 明日の朝食 壊してしまった大好きなおもちゃ そんな風に暮らしてきた 強く風が吹いている 秘密にしていた言葉も いつの間にか忘れてしまった 茹だる様な日差しの側に 一欠片、置いていこうと思う 走って、 走って、 走って、 走って、 走って、 あの高い雲の麓に 追いつけるとそう思っていた 過ぎていくばかりの今日を 疑わないように 優しい今日を 忘れないように 空の上まで登る 烟る花に 私の全てを これからの歌を 手を振って!
8.
春暈 04:54
春の隙間にカーテンから溢れる日差しを思っている 例えば、明日夜が来なくなるとして 特別な日を喜ぶことが出来ただろうか 懐かしい人 懐かしい思い出 過ぎてしまったことに気づくにはあまりにも寒すぎる 優しすぎる 気がつけば晴れたばかりの夜と くだらない嘘に どうしようもなく後ろ髪を引かれていた 諦めに行くことさえ出来れば 待惚けてしまったそれなりの日も 嘘で笑うことにして 帰り道はどこだろうなんて思えたのかもしれない 遠く、遠くで 悴んだ指を 霞む声を 忘れてしまったとしても 鈍く月が照って 今にも落ちてきそうな空 今日の終わり 思いの果て 淀んだ部屋に転がる 言葉に成れなかった後悔と 側に落ちていた影の色 忘れないように そうしていたはずなのだけれど 雨が降れば季節が変わってしまう 割れた窓の外に見える 退屈な日の訳を 枕に敷いて無邪気に喜んでいたあのお伽噺の続きを ただ取りこぼさないように 無くしてしまわないように 一人でも笑っていられるように 悲しまないように 悲しまないように 悲しまないように 悲しまないように

credits

released October 20, 2023

■制作
asami

■デザイン/イラスト
87(https://twitter.com/tenohilla)

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